毎年この頃になると、大学4年生の部員たちは、次々と就職先が決まり始める。
先日も、語学の学習を活かし、国際貿易に携わりたいと就職活動を進めていた部員が、内定を承諾したと報告してくれた。仕事が始まれば、通関士の難関資格にも挑戦しなければならないという。
気づかないうちに、ずいぶん頼もしくなったものだ。
「これでしばらくは卒業論文に集中できます」と、彼女はニコニコしていた。
大学では少林寺拳法に打ち込み、幼い頃には合気道の道場にも通っていた彼女が選んだ卒論のテーマは、「今昔物語」だそうだ。
『今昔物語集』を読み解きながら、日本人の文化や価値観を考察してみようという試みは、いかにも彼女らしい。
古本屋で古文の書物を安く手に入れたと、嬉しそうに語っている。
「どうして古文を読むの・・・?」
「その当時に使われていた言葉や、文体のリズムに触れることで、昔の人の身体感覚みたいなものが分かるような気がするのかもね・・・?」
そんなふうに話すと、彼女は「そうかも知れませんね」と、ニタニタ笑っていた。
これから豊かな書物との時間を旅していく彼女が、とても羨ましく見えた。
久しぶりに、「もう一度、人生をやり直してみたい」と、日頃の業務に追われる初老の男は少しだけ思った。

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