自己表現に頼らない

知り合いの奥さんと心理職について話をした。職場で活かすために、現在放送大学で学ばれているそうだ。教科書を見せてもらったが、とても分かりやすい。私も科目履修生として学んでみようかと思った。今さら学位そのものにこだわりはないが、学ぶことには興味がある。

その話を聞きながら、心理学を学び始めた頃の自分を思い出した。

あの頃は、この資格を取得すれば人生が大きく変わるような気がしていた。しかし、その先に広がる学問の深さや果てしない荒野のような世界までは想像できていなかった。

家に戻り、写真家の土田ヒロミさんのインタビューを見返した。

大学で化学を学び、企業に勤めながら写真を学び、その後写真作家の道を歩まれたという経歴も興味深い。しかし何より印象に残ったのは、83歳になった今も語られる写真に対する姿勢だった。

「作家としての特性を出さない」

「個人の特性を出すと個人の問題になってしまう」

その言葉には重みがあった。

徹底して自己表現に頼らない。個人の感受性や情緒性だけで世界を語ろうとしない。被写体との適切な距離を保ち、カメラという機械に委ねながら時代そのものを写し出そうとする。

その考え方は、写真だけでなく武道や心理療法にも通じるように思えた。

対象を理解しようとするとき、自分を表現することよりも、自分をできるだけ脇に置くことが求められるのかもしれない。

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