日本美術史研究家の太田利紗子さんが気になる

日本美術史研究家の太田利紗子さんが気になっている。

アーティスト村上隆さんの個展に登場した彼女は、氏がオマージュした日本画の原作を解説するとともに、その作品が現代において持つ価値を、軽妙なユーモアを交えながら語っていた。

大きな瞳に振袖姿。少し前のめりに歩く姿にはどこか愛嬌がある。しかし解説が始まると、その印象は一変する。村上隆氏をも唸らせるほどの博識で、日本美術の奥深さを縦横に語るのである。二人のやり取りを聴いていると、私も日本画の世界をもっと深く知りたくなってくる。

彼女のプロフィールを調べてみると、研究対象は絵画にとどまらない。染織をはじめ、映画や舞台衣装、さらにはアニメーションのルーツにまで及び、その領域は実に幅広い。

太田さんは「2050年の視点から、人類の共通資本としての文化をいかに存続させるか」という問いを語る。その言葉から私は、経済学者の宇沢弘文氏が提唱した「社会的共通資本」を連想した。

そして彼女はこう続ける。

「私にできることは、愚直に一枚の絵を描写し、一歩ずつ足を運び、一項一項と文献を読んでいくことだけです」

まるで武道家の言葉ではないか。文化を守ることも、武道を修めることも、結局は目の前の一歩を積み重ねることから始まるのだろう。そして武道も、社会的資本の一角を担いたい。

ぼんやりとしていた私の頭の中に、その言葉は静かで優しい光を差し込んでくれた。

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